はじめに|「朝起きられない」原因は人によって異なる
「朝、目覚まし時計が鳴っても起きられない」「何度もスヌーズしてしまう」「目は覚めているのに布団から出られない」といった悩みは、精神科の診察でもよく聞かれます。
こうした状態になると、「自分は意志が弱いのではないか」「もっと頑張って早起きしなければ」と考えてしまう人もいます。しかし、朝起きられない理由は一つではありません。
単純に睡眠時間が不足している場合もあれば、体内時計が後ろにずれている場合、目覚めた直後の脳が十分に覚醒していない場合、うつ状態のために行動を開始することが難しくなっている場合などがあります。また、睡眠薬などの薬の影響や、睡眠時無呼吸症候群、特発性過眠症といった睡眠障害が隠れていることもあります。
そのため、「朝起きられないなら目覚まし時計を増やせばよい」と一律に考えるのではなく、なぜ起きられないのかを整理し、その原因に合った方法を選ぶことが大切です。
この記事では、「朝起きられない」という状態を大きく6つのタイプに分け、それぞれについて考えられる原因と対策を解説します。
なお、ここで紹介する6つのタイプは正式な医学的診断分類ではありません。実際には複数の要因が重なっていることも多いため、自分の状態を理解するための目安として考えてください。
まず確認したい|あなたの「起きられない」はどのタイプ?
「朝起きられない」と一言でいっても、実際に起きていることは人によってかなり違います。
まず、次の3つのうちどれが自分に近いかを考えてみてください。
- 目覚まし時計が鳴っても、眠くて目を開けていられない
- 目は覚めるものの、頭がぼんやりして体が動かない
- 意識ははっきりしているものの、布団から出る気力が湧かない
この違いは重要です。
たとえば、強い眠気そのものが続いているのであれば、睡眠不足や睡眠障害を考える必要があります。一方、十分に目は覚めているにもかかわらず「動き始めること」ができないのであれば、うつ状態による意欲低下や行動開始の難しさが関係している可能性があります。
さらに、次のようなことも確認してみましょう。
- 普段は何時ごろ眠り、何時ごろ起きているか
- 平日と休日で起床時刻が大きく違わないか
- 休日には何時間くらい眠るか
- 朝だけでなく日中にも強い眠気があるか
- 夜になるとむしろ元気になるか
- 夜中に何度も目が覚めていないか
- いびきや無呼吸を指摘されたことがないか
- 睡眠薬や眠気の出る薬を服用していないか
数日から2週間程度、就寝時刻・起床時刻・途中で目が覚めた回数・昼寝などを記録する「睡眠日誌」をつけると、自分の睡眠パターンが見えやすくなります。
睡眠時間が足りていない|睡眠不足タイプ
朝起きられない原因として、まず確認したいのが単純な睡眠不足です。
たとえば、
「午前1時に寝て、毎朝6時半に起きている」
という生活をしていれば、睡眠時間は5時間半しかありません。この状態で朝に強い眠気を感じるのは、必ずしも病気ではなく、生理的に当然の反応である可能性があります。
米国睡眠医学会とSleep Research Societyは、健康な成人について、健康を保つためには原則として1晩に7時間以上の睡眠を定期的に確保することを推奨しています。ただし、必要な睡眠時間には個人差があります。
休日に長く寝ているなら睡眠不足の可能性がある
平日は6時間しか眠っていないものの、休日になると9~10時間眠るという人がいます。
もちろん休日に長く眠る理由はさまざまですが、このような場合には、平日に蓄積した睡眠不足を休日に取り戻そうとしている可能性があります。
平日に強い眠気があり、休日には目覚まし時計を使わなければ普段より何時間も長く眠るのであれば、まず睡眠時間そのものが足りているかを見直してみましょう。
対策|「早く起きる」前に必要な睡眠時間を確保する
睡眠不足型では、目覚まし時計を増やして無理に起床するより、夜に十分な睡眠時間を確保することが優先されます。
ただし、「今日から22時に寝よう」と急に就寝時刻を早めても、眠気がなければなかなか眠れません。
現在午前1時に眠っているのであれば、まず0時30分、次に0時といったように、生活全体を少しずつ前倒しするほうが現実的です。
また、仕事やスマートフォン、家事、動画視聴などで就寝時刻が後ろにずれている場合には、「早く寝よう」と努力するだけではなく、夜の時間の使い方そのものを見直す必要があります。
夜型になって朝眠い|体内時計が後ろにずれているタイプ
十分な睡眠時間を取ろうとしても、
「夜になっても眠くならない」
という人もいます。
たとえば、午後11時に布団に入っても午前2~3時まで眠れず、朝7時に起きるのが非常につらい一方、休日に午前3時から午前11時まで眠るのであれば比較的よく眠れる、といった状態です。
この場合、単純な不眠症というより、体内時計が社会生活の時刻より後ろにずれている可能性があります。
人間の脳には、およそ24時間周期で睡眠と覚醒のタイミングを調整する「概日リズム」、いわゆる体内時計があります。
この体内時計が大きく後ろにずれ、本人が希望する時刻にはなかなか眠れず、社会生活に必要な時刻に起きることが困難になった状態は、「睡眠・覚醒相後退障害(Delayed Sleep-Wake Phase Disorder:DSWPD)」と呼ばれることがあります。
DSWPDでは、本人にとって自然な時間帯まで睡眠をずらせば、比較的正常に眠れることが特徴です。治療では睡眠・覚醒スケジュールの調整や、適切なタイミングでのメラトニンなどが検討されます。
対策|「寝る時間」だけでなく「起きる時間」を整える
体内時計が後ろにずれている人が、
「今日こそ早く寝よう」
と考えて、眠くない時間から長時間布団に入っていても、なかなか眠れないことがあります。
そこで重要なのが、起床時刻をできるだけ一定にすることです。
特に、
- 起床時刻を大きくずらさない
- 起きたらカーテンを開ける
- 朝の時間帯に外の光を浴びる
- 朝食や散歩などを朝に行う
- 夜は強い照明や明るい画面を減らす
といった方法で、「この時間が朝である」という情報を体内時計に繰り返し与えていきます。
光は体内時計を調整する重要な刺激です。そのため、「朝は明るく、夜は暗く」という環境をつくることには生理学的な意味があります。
ただし、光療法の効果は照射する時間帯によって異なります。体内時計の問題が強く疑われる場合には、単に「明るい光を長時間浴びればよい」と考えるのではなく、医療機関で相談することも選択肢になります。
目は覚めても頭が動かない|睡眠慣性が強いタイプ
目覚まし時計の音には気づいているのに、
「頭に霧がかかったような感じがする」
「起きてからしばらく何も考えられない」
「目覚ましを止めた記憶すら曖昧」
という人もいます。
このような起床直後のぼんやりした状態を、睡眠医学では睡眠慣性(sleep inertia)と呼びます。
睡眠慣性とは、睡眠から覚醒へ切り替わった直後に、一時的に注意力・判断力・反応速度などが低下する現象です。
つまり、目が開いた瞬間に脳全体が完全な覚醒状態へ切り替わるわけではありません。
睡眠慣性は誰にでも起こり得ますが、睡眠不足がある場合や、体内時計上まだ「夜」にあたる時間帯に起こされた場合などには、強くなることがあります。
「起きる」と「完全に覚醒する」は別の過程
このタイプの人では、
「目覚ましが鳴ったらすぐに完全にシャキッとしなければ」
と考える必要はありません。
大切なのは、ぼんやりしている時間をそのまま布団の中で過ごさないよう、覚醒までの流れをあらかじめ決めておくことです。
たとえば、
アラームが鳴る
↓
立って止める
↓
カーテンを開ける
↓
洗面所へ行く
↓
水を飲む、顔を洗う
という一連の行動を固定します。
「起きるかどうか」をその都度判断するのではなく、目覚まし時計を止めた後に行う行動までセットにしておくことがポイントです。
アラームは「音を大きくする」以外にも工夫できる
アラームを枕元に置いていると、ほとんど覚醒しないまま止めてしまう人もいます。
その場合には、ベッドから立たなければ止められない場所に置く方法があります。
また、
- タイマーで照明を点灯する
- 自動カーテンを利用する
- 起床後すぐに音楽を流す
など、本人の意思だけに頼らず、環境そのものを朝の状態に変えてしまう方法もあります。
なお、光、カフェイン、温度刺激などが睡眠慣性を軽減できるかについて研究されていますが、どの方法にも誰にでも確実に効くというほど強いエビデンスがあるわけではありません。睡眠慣性が強い場合には、まず慢性的な睡眠不足や体内時計のずれを改善することが基本になります。
長く寝ているのに疲れが取れない|睡眠の質が低下しているタイプ
「8時間寝ているから睡眠時間は足りているはずなのに、朝がつらい」
という人もいます。
ここで注意したいのは、布団の中にいた時間と、質のよい睡眠が取れていた時間は同じではないということです。
たとえば睡眠中に何度も覚醒していれば、8時間布団に入っていたとしても、十分に連続した睡眠が取れていない可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群が隠れていることもある
睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中に繰り返し気道が狭くなったり塞がったりして、呼吸が止まったり浅くなったりします。
本人はそのたびに完全に目覚めるとは限りませんが、睡眠が細かく分断されるため、
「長時間寝たのにすっきりしない」
「昼間も眠い」
と感じることがあります。
特に、
- 大きないびきをかく
- 睡眠中に呼吸が止まっていると言われる
- 朝に頭痛がある
- 日中の眠気が強い
- 車の運転中にも眠くなる
といった症状がある場合には、一度医療機関に相談することをおすすめします。
不眠症ではCBT-Iが重要
夜中に何度も目が覚める、寝つくまで長時間かかる、といった慢性的な不眠がある場合には、「睡眠衛生を良くする」だけで十分とは限りません。
慢性不眠症に対しては、不眠症に対する認知行動療法(CBT-I:Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia)が標準的な治療の一つです。
CBT-Iでは、単に「早く寝る」「スマートフォンをやめる」と指導するだけではありません。
寝床と覚醒状態の結びつきを弱める「刺激制御」、必要以上に長時間布団にいないよう睡眠時間を調整する方法、睡眠についての過度な不安や思い込みを修正する方法などを組み合わせます。
米国睡眠医学会のガイドラインでも、成人の慢性不眠症に対して多要素のCBT-Iが強く推奨されています。
関連記事:不眠症の認知行動療法CBT-Iとは|睡眠日誌・刺激統制・睡眠制限療法を詳しく解説
目は覚めているのに布団から出られない|抑うつ・行動開始困難型
精神科の診療では、睡眠そのものとは少し違う「朝起きられない」もあります。
たとえば、
「目は覚めています。でも会社に行くことを考えると動けません」
「スマートフォンは見られるけれど、布団から出る気になれません」
というケースです。
この場合、「眠気」が主な問題ではなく、行動を開始すること自体が難しくなっている可能性があります。
うつ病では、気分の落ち込みだけでなく、
- 何かを始めることができない
- 動作が遅くなる
- 考えが進まない
- 何をするにも大きな労力が必要に感じる
といった「精神運動制止」と呼ばれる症状がみられることがあります。
また、うつ症状には時間帯による変化がみられることがあり、朝に症状が強い人もいれば、夕方に悪化する人もいます。したがって、「うつ病なら必ず朝が悪い」というわけではありません。
対策|朝の目標を極端に小さくする
このタイプの人に、
「朝7時に起きて、身支度をして、朝食を食べて、会社へ行きましょう」
と言っても、一連の行動全体が大きな負担として感じられることがあります。
そこで役に立つのが、行動を細かく分ける方法です。
たとえば朝の目標を、
会社へ行く
ではなく、
布団から足を出す
まで小さくします。
それができたら、
立つ
次に、
カーテンを開ける
その次に、
洗面所まで行く
と進めていきます。
重要なのは、「やる気が出たら動く」と考えないことです。
うつ状態では、行動するための意欲が十分に湧いてくるまで待っていると、いつまでも行動を開始できないことがあります。
そこで、
少し行動する → 環境が変わる → 次の行動がしやすくなる
という順番をつくります。
これは、うつ病に対する心理療法の一つである行動活性化療法(Behavioral Activation)とも共通する考え方です。行動活性化療法には、うつ症状を改善する心理療法として一定のエビデンスがあります。
朝に小さな「報酬」を置く
起床後に嫌なことしか待っていなければ、布団から出る心理的なハードルは高くなります。
そこで、
- 好きなコーヒーを飲む
- 好きな音楽を流す
- 短い散歩をする
- 家族と朝食を食べる
- 好きなラジオや動画を朝だけ見る
など、起床後の行動に小さな楽しみを組み合わせることも一つの方法です。
ただし、うつ症状が強い場合には、こうした工夫だけで解決しようとするのではなく、うつ病そのものに対する治療が必要になります。
十分眠っても強い眠気が続く|過眠・薬剤の影響を考えるタイプ
「9時間眠っているのに起きられない」
「休日には12時間以上眠ってしまう」
「朝だけでなく昼間もずっと眠い」
という場合には、単なる生活習慣の問題ではない可能性があります。
まず薬の影響を確認する
精神科で特に確認したいのが、薬による眠気です。
睡眠薬だけでなく、
- 抗不安薬
- 一部の抗うつ薬
- 抗精神病薬
- 抗ヒスタミン作用の強い薬
- 一部の抗てんかん薬や鎮痛補助薬
などでも眠気が生じることがあります。
夜に薬を飲んでよく眠れるようになった一方で、
「朝になっても薬の作用が残っている」
ということもあります。
したがって、「夜眠れないから睡眠薬を増やす」という方向だけで考えるのではなく、夜の睡眠と翌朝の覚醒をセットで評価することが重要です。
睡眠薬は薬の種類によって作用時間が異なります。また、同じ薬でも年齢、体質、他の薬との組み合わせなどによって翌朝への影響が異なります。
服用している薬が原因かもしれないと思っても、自己判断で急に中止することは避け、処方している医師に相談してください。
特発性過眠症やナルコレプシーなどもある
十分な睡眠時間を確保しているにもかかわらず、日中に耐え難い眠気が続く場合には、ナルコレプシーや特発性過眠症など、「中枢性過眠症」と呼ばれる睡眠障害が隠れている場合があります。
特発性過眠症では、長時間眠ってしまうだけでなく、目覚めた後も強い眠気や混乱が長く続くことがあります。
これは単なる「朝が苦手」という程度を超えた状態で、「sleep drunkenness」と表現されることもあります。
中枢性過眠症には専門的な検査が必要になることがあります。米国睡眠医学会では、成人の特発性過眠症に対する薬物療法についても診療ガイドラインが作成されています。
このような場合には、目覚まし時計を工夫して無理に起こそうとするより、睡眠専門医療機関などで原因を評価することが重要です。
朝起きやすくするために共通してできること|「朝を設計する」
ここまでタイプごとの対策を説明してきましたが、多くの人に共通して使いやすい方法があります。
それは、「強い意志で起きる」のではなく、「起きる仕組みをつくる」ことです。
朝はまだ覚醒が十分でなく、判断力も低下しています。
その状態で、
「今日は起きるべきか、もう少し眠るべきか」
と毎朝考えると、布団の中に残る選択をしやすくなります。
そこで、朝に判断する必要をできるだけ減らします。
起床時刻を大きく変えない
平日は7時に起きているのに、休日は昼まで寝るという生活を続けると、睡眠・覚醒リズムが後ろにずれやすくなります。
休日だから多少長く眠ること自体が問題なのではありませんが、毎週大きく起床時刻が変わる場合には生活リズムを見直してみてもよいでしょう。
起きたら光を入れる
朝になったらカーテンを開け、できれば屋外の明るい光を浴びます。
起床後に散歩をする、コンビニまで歩く、ベランダに出るなど、光と行動を一緒にする方法もあります。
「最初の3つの行動」を固定する
たとえば、
目覚ましを止める
↓
カーテンを開ける
↓
洗面所へ行く
と決めておきます。
朝の状態に合わせて毎日計画を考えるのではなく、同じ行動を繰り返すことで、起床を習慣化していきます。
外からのきっかけを利用する
自分の意志だけで起床するのが難しい場合には、
- 家族と朝食を食べる
- 朝に散歩の約束をする
- 朝にオンライン英会話を入れる
- 出勤前にカフェに立ち寄る
など、「起きなければ発生しない予定」を作る方法もあります。
特に抑うつや先延ばしが関係している場合には、自分の内側から生まれるやる気だけに頼るより、環境から行動を引き出すほうがうまくいくことがあります。
睡眠薬を増やせば朝起きやすくなるとは限らない
「朝起きられない」という相談に対して、
「夜によく眠れていないから、もっと強い睡眠薬を使えばよいのではないか」
と考えることがあります。
もちろん、不眠症があり、適切な薬物療法によって夜の睡眠が改善することで、結果として朝の状態が良くなる人もいます。
しかし、睡眠薬には翌朝まで眠気が残る可能性があります。
つまり、
夜眠れない
↓
睡眠薬を増やす
↓
朝の眠気が強くなる
↓
朝起きられなくなる
という逆の流れが起こることもあります。
そのため、睡眠薬を調整する際には、
「何時間眠れたか」
だけではなく、
「朝どの程度すっきり起きられているか」
「昼間に眠気が残っていないか」
まで確認する必要があります。
慢性不眠症では、薬物療法だけでなくCBT-Iが重要です。ガイドラインでも、CBT-Iは慢性不眠症に対する中心的な治療として位置づけられています。
睡眠薬を使うこと自体が悪いわけではありません。大切なのは、「眠らせること」だけを治療目標にせず、翌日の生活まで含めて治療を考えることです。
「朝起きられない」で医療機関に相談したほうがよいサイン
朝が苦手という人は珍しくありません。
しかし、次のような状態がある場合には、生活上の工夫だけではなく、医療機関への相談を検討してください。
- 十分な睡眠時間を確保しても朝起きられない
- 9~10時間以上眠っても強い眠気が残る
- 日中に眠り込んでしまう
- 車の運転中など、眠ってはいけない場面でも眠くなる
- 大きないびきや睡眠中の無呼吸を指摘されている
- 朝に強い頭痛や口の渇きがある
- 夜中に何度も目が覚める
- 自然に任せると睡眠時間が極端に後ろへずれる
- 遅刻や欠勤、欠席が繰り返されている
- 強い気分の落ち込みや意欲低下を伴う
- 睡眠薬などを変更してから急に起きられなくなった
特に、日中の強い眠気があり、運転や仕事中の事故につながる危険がある場合には、早めに医療機関へ相談することが重要です。
まとめ|「早く起きよう」と頑張る前に、起きられない理由を考える
「朝起きられない」という症状には、さまざまな原因があります。
睡眠時間そのものが不足している人もいれば、体内時計が後ろにずれている人、目覚めた後の睡眠慣性が強い人、夜の睡眠が細かく分断されている人もいます。
また、精神科では、
「眠くて起きられない」のではなく、「目は覚めているけれど行動を開始できない」
というケースも重要です。
この場合には、目覚まし時計を増やすよりも、「布団から足を出す」「カーテンを開ける」など、最初の行動を極端に小さくするほうが役立つことがあります。
一方、十分な睡眠時間を確保しているにもかかわらず強い眠気が続く場合には、薬の影響、睡眠時無呼吸症候群、ナルコレプシー、特発性過眠症などを考える必要があります。
朝起きるために最も大切なのは、「もっと頑張って起きよう」と考えることではありません。
睡眠不足には睡眠時間を、体内時計のずれには生活リズムを、行動開始の難しさには行動を小さくする工夫を、といったように、原因に合わせて対策を変えることです。
そして、目覚まし時計だけに頼るのではなく、
起床時刻、光、朝の行動、環境を組み合わせて「朝を設計する」
という考え方が役立ちます。
それでも改善しない場合には、「朝が弱い体質だから」と決めつけず、一度医療機関で原因を整理してみてもよいでしょう。
参考文献
Watson NF, Badr MS, Belenky G, et al. Recommended Amount of Sleep for a Healthy Adult: A Joint Consensus Statement of the American Academy of Sleep Medicine and Sleep Research Society. Journal of Clinical Sleep Medicine. 11(6). 2015.
Auger RR, Burgess HJ, Emens JS, et al. Clinical Practice Guideline for the Treatment of Intrinsic Circadian Rhythm Sleep-Wake Disorders: Advanced Sleep-Wake Phase Disorder, Delayed Sleep-Wake Phase Disorder, Non-24-Hour Sleep-Wake Rhythm Disorder, and Irregular Sleep-Wake Rhythm Disorder. Journal of Clinical Sleep Medicine. 11(10). 2015.
Sletten TL, Magee M, Murray JM, et al. Efficacy of Melatonin with Behavioural Sleep-Wake Scheduling for Delayed Sleep-Wake Phase Disorder: A Double-Blind, Randomised Clinical Trial. PLOS Medicine. 15(6). 2018.
Hilditch CJ, McHill AW. Sleep Inertia: Current Insights. Nature and Science of Sleep. 11. 2019.
Trotti LM. Waking Up Is the Hardest Thing I Do All Day: Sleep Inertia and Sleep Drunkenness. Sleep Medicine Reviews. 35. 2017.
Edinger JD, Arnedt JT, Bertisch SM, et al. Behavioral and Psychological Treatments for Chronic Insomnia Disorder in Adults: An American Academy of Sleep Medicine Clinical Practice Guideline. Journal of Clinical Sleep Medicine. 17(2). 2021.
Sateia MJ, Buysse DJ, Krystal AD, et al. Clinical Practice Guideline for the Pharmacologic Treatment of Chronic Insomnia in Adults: An American Academy of Sleep Medicine Clinical Practice Guideline. Journal of Clinical Sleep Medicine. 13(2). 2017.
Maski K, Trotti LM, Kotagal S, et al. Treatment of Central Disorders of Hypersomnolence: An American Academy of Sleep Medicine Clinical Practice Guideline. Journal of Clinical Sleep Medicine. 17(9). 2021.
Buyukdura JS, McClintock SM, Croarkin PE. Psychomotor Retardation in Depression: Biological Underpinnings, Measurement, and Treatment. Progress in Neuro-Psychopharmacology & Biological Psychiatry. 35(2). 2011.
Cuijpers P, Karyotaki E, Harrer M, Stikkelbroek Y. Individual Behavioral Activation in the Treatment of Depression: A Meta Analysis. Psychotherapy Research. 33(7). 2023.