はじめに|睡眠障害は「眠れない」だけではありません
「睡眠障害」と聞くと、「夜になってもなかなか眠れない」「夜中に何度も目が覚める」といった不眠を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、睡眠障害に含まれるのは不眠症だけではありません。
たとえば、
- 夜は十分眠っているのに、昼間に強い眠気がある
- 夜になるとなかなか眠くならず、朝になると起きられない
- 睡眠中に何度も呼吸が止まる
- 寝ている間に歩き回ったり、大声を出したりする
- 寝ようとすると脚がむずむずしてじっとしていられない
といった症状も、睡眠障害によって生じることがあります。
睡眠障害の国際的な診断分類であるICSD-3-TRでは、睡眠障害は大きく「不眠症」「睡眠関連呼吸障害」「中枢性過眠症」「概日リズム睡眠・覚醒障害」「睡眠時随伴症」「睡眠関連運動障害」の6つのグループに分類されています。
つまり、「睡眠に問題がある」という同じ訴えであっても、その背景にある病気は人によって異なります。当然ながら、必要となる検査や治療も異なります。
また、仕事が忙しくて十分な睡眠時間を確保できていない状態と、十分眠る時間を確保しているにもかかわらず眠れない状態も区別する必要があります。前者は「睡眠不足」であり、それだけで不眠症と診断されるわけではありません。
この記事では、代表的な睡眠障害の種類や症状から、診断、睡眠を調節する仕組み、精神疾患との関係、治療、医療機関を受診する目安まで、睡眠障害の全体像を解説します。
それぞれの病気や治療について詳しく知りたい場合には、各項目から個別の記事をご覧ください。
眠れないだけではない|睡眠障害の種類と主な症状
睡眠障害は、「夜に眠れない病気」の総称ではありません。
現在の睡眠医学では、どのような形で睡眠に問題が生じているのかによって、複数のグループに分けて考えます。
代表的な睡眠障害について順番にみていきましょう。
不眠症
不眠症は、
- なかなか寝つけない
- 夜中に何度も目が覚める
- 朝早く目が覚め、その後眠れない
といった症状を特徴とする睡眠障害です。
ただし、「昨日はなかなか眠れなかった」というだけで不眠症になるわけではありません。
重要なのは、十分に眠れる時間や環境があるにもかかわらず睡眠の問題が生じ、その結果として日中の生活にも支障が出ていることです。
たとえば、夜に眠れないだけでなく、
- 疲れが取れない
- 集中できない
- イライラする
- 気分が落ち込む
- 仕事や家事の効率が落ちる
- 睡眠のことばかり心配してしまう
といった問題が伴うことがあります。
慢性不眠症では、単に「睡眠時間が短い」というだけではなく、睡眠に対する不満と日中への影響を含めて評価します。
睡眠関連呼吸障害
代表的な病気が閉塞性睡眠時無呼吸です。
睡眠中には全身の筋肉が緩みますが、その際に喉の空気の通り道が狭くなり、呼吸が繰り返し止まったり浅くなったりします。
本人は眠っているため、呼吸が止まっていることに気づいていない場合も少なくありません。
家族から、
「大きないびきをかいている」
「いびきが急に止まり、その後大きく息をしている」
などと指摘されて初めて気づくこともあります。
睡眠中に呼吸が繰り返し妨げられると、長時間ベッドにいたとしても睡眠が細かく分断されます。そのため、
- 朝起きてもすっきりしない
- 起床時に頭痛がする
- 日中に眠い
- 集中力が続かない
などの症状がみられることがあります。
睡眠時無呼吸が疑われる場合には、症状だけで診断するのではなく、状況に応じて自宅で行う睡眠検査や、医療機関で行う終夜睡眠ポリグラフ検査などが用いられます。
中枢性過眠症
「眠れない」のとは反対に、昼間に強い眠気が生じることを中心とした睡眠障害もあります。
代表的なものが、ナルコレプシーや特発性過眠症です。
単なる睡眠不足による眠気とは異なり、夜間にある程度の睡眠を確保しているにもかかわらず、日中の強い眠気が続きます。
ナルコレプシーでは、強い眠気や居眠りに加えて、笑ったり驚いたりしたときに突然体の力が抜ける「情動脱力発作」がみられることがあります。
一方、特発性過眠症では、長時間眠っても眠気が取れにくかったり、目覚めた後もなかなか頭が働かない「睡眠酩酊」と呼ばれる状態がみられたりすることがあります。
ただし、昼間に眠いからといって、すぐに過眠症と診断されるわけではありません。
慢性的な睡眠不足、睡眠時無呼吸、服用している薬、うつ病などでも日中の眠気は生じるため、まずこれらを区別する必要があります。
概日リズム睡眠・覚醒障害
私たちの体には、およそ24時間周期で睡眠や覚醒を調節する「体内時計」が備わっています。
この体内時計と、学校や仕事など社会生活で求められる睡眠時間帯との間に大きなずれが生じると、概日リズム睡眠・覚醒障害となることがあります。
代表的なのが睡眠・覚醒相後退障害です。
たとえば、
「午前2時や3時にならないと眠れない」
「朝7時に起きることが非常につらい」
という人であっても、午前3時から午前11時までであれば比較的よく眠れることがあります。
この場合、睡眠そのものを作る能力よりも、眠るタイミングが社会生活と合っていないことが中心的な問題です。
そのため、「早くベッドに入ればよい」というだけでは解決しないことがあります。
睡眠時随伴症
睡眠時随伴症とは、睡眠中や睡眠と覚醒の切り替わりの際に、通常ではみられない行動や体験が生じる睡眠障害です。
代表的なものとして、
- 睡眠中に歩き回る睡眠時遊行症、いわゆる夢遊病
- 強い悪夢を繰り返す悪夢障害
- 夢の内容に合わせて叫んだり、手足を動かしたりするレム睡眠行動障害
などがあります。
特にレム睡眠行動障害では、本人や一緒に寝ている人がけがをするほど激しく体を動かすことがあります。
睡眠中の異常行動は、本人が覚えていないことも多いため、家族から得られる情報が診断の手がかりになることがあります。
睡眠関連運動障害
睡眠に関連して体の異常な感覚や運動が生じ、それによって睡眠が妨げられる病気もあります。
代表的なのがむずむず脚症候群です。
夜になって座ったり横になったりすると、
「脚の中がむずむずする」
「じっとしていると不快で仕方がない」
「脚を動かしたくなる」
といった感覚が生じます。
歩いたり脚を動かしたりすると一時的に楽になることが特徴です。
このため、ベッドに入ってから症状が強くなり、なかなか眠れないということがあります。
睡眠中に脚が繰り返し動く周期性四肢運動障害なども、睡眠関連運動障害に含まれます。
睡眠障害はどのように診断されるのか
睡眠障害の診断では、「何時間眠っていますか」という質問だけでは十分ではありません。
重要なのは、
いつ眠ろうとしているのか、実際にいつ眠っているのか、睡眠中に何が起きているのか、そして翌日の生活にどのような影響が生じているのか
を総合的に調べることです。
まず睡眠のパターンを確認します
診察では、
- 何時にベッドに入るか
- 何時ごろ眠りにつくか
- 夜中に何回くらい目が覚めるか
- 最後に目が覚めるのは何時か
- 実際にベッドから出るのは何時か
- 昼寝をしているか
- 平日と休日で睡眠時間がどの程度違うか
などを確認します。
この違いは重要です。
たとえば「22時に寝ています」と話していても、実際には22時にベッドに入り、スマートフォンを見ながら0時ごろまで起きているという場合があります。
そのため、ベッドにいる時間と、実際に眠っている時間は分けて考える必要があります。
睡眠日誌を使うことがあります
睡眠の状態を客観的に整理するために、「睡眠日誌」をつけてもらうことがあります。
毎朝、
- 前日の就床時刻
- 入眠までにかかった時間
- 夜間に目が覚めていた時間
- 起床時刻
- 実際にベッドから出た時刻
などを記録します。
数週間記録すると、自分の感覚だけでは分からなかった睡眠のパターンが見えてくることがあります。
また、腕時計のような機器で活動量を測定するアクチグラフィを補助的に使うこともあります。特に、睡眠時間帯のずれを評価するときなどに役立ちます。
睡眠に影響するものを確認します
睡眠の問題は、睡眠障害そのものだけで起きるとは限りません。
たとえば、
- カフェイン
- アルコール
- ニコチン
- 一部の薬
- 夜間の仕事
- 不規則な勤務
- 痛み
- 夜間の頻尿
- 呼吸器疾患
- 甲状腺疾患
- うつ病
- 不安症
などが睡眠に影響することがあります。
そのため、睡眠だけを切り離して考えるのではなく、身体の状態、精神状態、生活環境、服用している薬まで含めて評価します。
必要に応じて睡眠検査を行います
すべての睡眠障害で大がかりな検査が必要になるわけではありません。
たとえば、典型的な不眠症では問診や睡眠日誌を中心に診断することができ、通常は睡眠ポリグラフ検査が必須ではありません。
一方、
- 睡眠時無呼吸が疑われる
- 原因不明の強い日中の眠気がある
- 睡眠中に異常な行動がある
といった場合には、睡眠中の脳波、呼吸、酸素飽和度、筋肉の動きなどを測定する検査が必要になることがあります。
睡眠障害によって必要な検査が異なることも、最初に病態を見極めることが重要な理由です。
睡眠はどのように調節され、なぜ睡眠障害が起こるのか
私たちは夜になると自然に眠くなり、朝になると目を覚まします。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか。
睡眠を理解するときに特に重要なのが、「睡眠圧」と「体内時計」という2つの仕組みです。
この考え方は「睡眠の二過程モデル」と呼ばれ、現在でも睡眠を理解するうえで基本となるモデルです。
起きているほど強くなる「睡眠圧」
人間には、起きている時間が長くなるほど眠くなる仕組みがあります。
朝に目覚めた直後は睡眠圧が低く、その後、起きている時間が長くなるにつれて徐々に睡眠圧が高まります。
そして夜に眠ると、睡眠圧は少しずつ下がっていきます。
これは、空腹に少し似ています。
食事から時間がたつほど空腹になるように、睡眠から時間がたつほど「眠る必要性」が高まっていくと考えると分かりやすいでしょう。
そのため、夕方に長い昼寝をすると睡眠圧が下がり、夜になってもなかなか眠くならないことがあります。
「いつ眠くなるか」を調節する体内時計
一方で、人間は「起きてから何時間たったか」だけで眠くなるわけではありません。
体にはおよそ24時間周期で動く体内時計があり、時間帯によって眠りやすさと目覚めやすさを調節しています。
体内時計を調節する重要な手がかりの一つが光です。
特に朝の光は、体内時計を外の昼夜の周期に合わせるうえで大きな役割を果たします。
一方、夜遅い時間まで強い光を浴びたり、睡眠・覚醒時刻が毎日大きく変化したりすると、体内時計が遅れたり不安定になったりすることがあります。
睡眠障害は一つの原因だけで起きるとは限りません
実際の睡眠障害では、睡眠圧や体内時計だけでなく、さまざまな要因が複雑に関係しています。
たとえば、
- 仕事や人間関係のストレス
- 夜型の生活
- 不規則な勤務
- 長時間の昼寝
- カフェイン
- アルコール
- 痛み
- 身体疾患
- 精神疾患
- 薬の影響
- 加齢による睡眠の変化
などです。
不眠症では、「最初に眠れなくなった原因」と「その後も不眠が続いている原因」が異なる場合もあります。
たとえば、仕事上の強いストレスをきっかけとして眠れなくなった人が、
「今日も眠れなかったらどうしよう」
と毎晩考えるようになり、早い時間からベッドに入り、長時間眠ろうと努力するようになることがあります。
すると、「ベッドに入ると睡眠を心配する」という状態が作られ、最初のストレスが軽減した後も不眠だけが残ることがあります。
このように、睡眠障害では単純に原因を一つ探すのではなく、現在の睡眠を悪化させている要因を一つずつ整理していくことが大切です。
精神疾患と睡眠障害にはどのような関係があるのか
睡眠と精神状態には深い関係があります。
かつては、精神疾患によって睡眠障害が生じるという一方向の見方が中心でした。
しかし現在では、少なくとも不眠とうつ病などについては、精神状態が睡眠を悪化させるだけでなく、睡眠の悪化も精神状態に影響するという双方向の関係が重要だと考えられています。
うつ病と睡眠障害
うつ病では、不眠がよくみられます。
- 寝つけない
- 夜中に何度も起きる
- 朝早く目が覚める
など、さまざまな形で現れます。
一方で、睡眠時間が長くなったり、昼間の眠気が強くなったりする人もいます。
重要なのは、不眠を単なるうつ病の「おまけの症状」と考えないことです。
不眠とうつ病には双方向の関連があり、不眠が続くこと自体がその後のうつ病の発症や経過と関連することが分かっています。
そのため、うつ病を治療するときにも、睡眠の状態を個別に評価することが重要です。
不安症と睡眠障害
不安が強いと、ベッドに入ってからも頭の中で考え続けてしまうことがあります。
翌日の仕事、人間関係、健康などについて考え続け、体は横になっていても脳が覚醒した状態が続きます。
逆に、不眠が続くことで、
「今日も眠れないのではないか」
「眠れなかったら明日は何もできないのではないか」
という睡眠そのものに対する不安が強くなることもあります。
このように、不安と不眠が互いを強め合うことがあります。
適応障害と睡眠障害
職場の人間関係、仕事量の増加、家庭内の問題など、明確なストレスをきっかけとして適応障害が生じた場合にも、不眠はよくみられます。
ストレスを受けている間は、夜になっても緊張が続き、
「明日の仕事のことを考えてしまう」
「朝になるのが怖い」
といった状態になることがあります。
ストレスの軽減とともに睡眠が改善することもありますが、不眠が長期間続くと、不眠そのものに対する治療が必要になる場合があります。
双極症と睡眠・概日リズム
双極症では睡眠の変化が特に重要です。
躁状態や軽躁状態では、単に「眠れない」のではなく、**睡眠時間が短くても本人があまり眠気や疲労を感じない「睡眠欲求の減少」**がみられることがあります。
また、睡眠・覚醒リズムの乱れは気分の変動とも密接に関係します。
そのため、双極症では睡眠時間や生活リズムの変化が、病状を把握するための重要な手がかりとなります。
PTSDと不眠・悪夢
心的外傷後ストレス障害(PTSD)では、
- なかなか眠れない
- 夜中に何度も目が覚める
- 強い悪夢を見る
- 物音に敏感になり眠りが浅くなる
といった睡眠症状がみられることがあります。
このように、「よく眠れない」という訴えの背景に精神疾患が存在することもあれば、睡眠障害そのものが独立した治療対象となっていることもあります。
そのため、精神科診療では精神症状と睡眠を切り離さず、両方を評価することが重要です。
睡眠障害を放置するとどのような影響があるのか
睡眠の問題は、「夜がつらい」ということだけにとどまりません。
むしろ、睡眠障害で重要なのは翌日以降の生活への影響です。
集中力や判断力が低下する
十分な睡眠が得られなければ、
- 集中できない
- 判断に時間がかかる
- ミスが増える
- 物事を覚えにくい
- 作業効率が低下する
といった問題が起こることがあります。
特に自動車の運転や危険を伴う作業では、強い眠気は事故につながる可能性があります。
「眠いけれど我慢して運転する」という対応は危険です。
気分にも影響する
睡眠不足や不眠が続くと、
- イライラしやすい
- 不安が強くなる
- 気分が落ち込みやすい
といった変化が起こることがあります。
先ほど説明したように、特に不眠とうつ病・不安症には双方向の関連があります。
身体的な健康とも関連します
睡眠と身体の健康にも関連があります。
特に閉塞性睡眠時無呼吸では、高血圧や心血管疾患などとの関連が知られています。
慢性的な不眠についても、観察研究では心血管疾患などとの関連が報告されています。
ただし、「不眠があれば必ず心臓病になる」という意味ではありません。
睡眠時間、肥満、運動、喫煙、飲酒、基礎疾患など多くの要因が健康に関係するため、個々の研究で示される「関連」と、睡眠障害そのものが直接病気を起こすという「因果関係」は区別して考える必要があります。
睡眠障害の種類によって健康への影響も異なります。
そのため、不安を抱くよりも、症状が続いている場合にはどの睡眠障害に当てはまるのかを確認し、必要な治療を受けることが重要です。
睡眠障害はどのように治療するのか
睡眠障害の治療は、「眠れないから睡眠薬を飲む」という一つの方法だけではありません。
どのような睡眠障害なのかによって治療は大きく異なります。
原因となっている病気や要因を治療する
まず、睡眠を悪化させている原因があれば、それへの対応を検討します。
たとえば、
- 痛みで眠れない
- 夜間の頻尿で何度も起きる
- うつ病や不安症のため眠れない
- 薬の影響で眠れない
- カフェインを多量に摂取している
- 勤務時間の影響で睡眠時間帯が乱れている
といった場合には、その原因への対応が重要です。
ただし、もともとの原因が改善しても、不眠だけが残ることがあります。
その場合には、不眠症そのものを治療します。
不眠症では睡眠衛生や認知行動療法(CBT-I)を行う
不眠症の非薬物療法として重要なのが、不眠症に対する認知行動療法(CBT-I:Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia)です。
CBT-Iでは、単に「早寝早起きをしましょう」と指導するわけではありません。
睡眠日誌などから実際の睡眠パターンを確認したうえで、
- 睡眠についての生活習慣や環境を整える
- ベッドと覚醒を結びつけている習慣を修正する「刺激制御療法」
- 実際に眠れている時間に合わせてベッドにいる時間を調整する「睡眠制限療法」や「睡眠圧縮療法」
- 「8時間眠らなければならない」など、睡眠をかえって妨げている考え方を見直す認知的介入
などを組み合わせます。
AASMの臨床ガイドラインでは、成人の慢性不眠症に対して複数の方法を組み合わせたCBT-Iが強く推奨されています。一方、睡眠衛生指導だけを慢性不眠症の唯一の治療として行うことは推奨されていません。睡眠衛生は重要ですが、必要に応じて他の行動療法や認知的介入と組み合わせることが大切です。
→ 関連記事:不眠症の認知行動療法CBT-Iとは|睡眠日誌・刺激統制・睡眠制限療法を詳しく解説
薬物療法を行う
不眠症では、症状や経過に応じて睡眠薬を使用することがあります。
ただし、「睡眠薬」という一種類の薬があるわけではありません。
現在使われている睡眠薬には、
- ベンゾジアゼピン系睡眠薬
- 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(Z-drug)
- オレキシン受容体拮抗薬
- メラトニン受容体作動薬
など、作用の仕組みが異なる複数の種類があります。
それぞれ効果、副作用、作用時間、依存の生じやすさなどが異なるため、その人の年齢、症状、併用薬、身体疾患などを考慮して選択します。
薬物療法が必要な人に適切に睡眠薬を使用することには意義があります。一方で、漫然と薬を増やしたり、逆に長期間服用してきた薬を自己判断で急に中止したりすることは避ける必要があります。
→ 関連記事:睡眠薬にはどんな種類がある?|作用時間・依存性・長期使用のリスクを解説
睡眠障害の種類に応じた専門的な治療を行う
不眠症以外の睡眠障害では、まったく異なる治療が必要になることがあります。
たとえば、閉塞性睡眠時無呼吸では、重症度や背景に応じてCPAP(持続陽圧呼吸療法)などが用いられます。
CPAPとは、睡眠中にマスクを装着し、空気を送り込むことで喉の空気の通り道が閉じないようにする治療です。
概日リズム睡眠・覚醒障害では、体内時計を調整するために光を利用した治療や、病型によっては適切なタイミングでメラトニンなどを使用する治療が検討されます。重要なのは、光や薬を「使うかどうか」だけでなく、何時に使うかです。体内時計を動かす方向は使用する時間帯によって異なるため、自己流の光療法が逆効果になる場合もあります。
むずむず脚症候群では、鉄の状態や原因となる薬などを確認したうえで、必要に応じて治療を行います。
このように、睡眠障害は病気によって治療法が大きく異なるため、まず診断を整理することが重要です。
睡眠障害では何科を受診すればよいのか
睡眠に問題がある場合、「何科に行けばよいのだろう」と迷う方もいるでしょう。
睡眠障害は精神科だけで診療する病気でも、呼吸器内科だけで診療する病気でもありません。
症状によって適した診療科が異なります。
精神科・心療内科
次のような場合には、精神科や心療内科が選択肢になります。
- 不眠が続いている
- ストレスが強く眠れない
- 不安が強い
- 気分の落ち込みを伴っている
- うつ病、適応障害、不安症などが疑われる
- 睡眠薬について相談したい
特に精神症状と睡眠の問題が同時に存在する場合には、両方を一緒に評価することが重要です。
睡眠専門外来
原因がはっきりしない睡眠障害や、
- 非常に強い日中の眠気
- 特殊な睡眠中の行動
- 概日リズムの大きなずれ
- 複数の睡眠障害が疑われる
といった場合には、睡眠専門医療機関での評価が有用です。
必要に応じて睡眠ポリグラフ検査など専門的な検査を受けることができます。
呼吸器内科・耳鼻咽喉科など
大きないびきや睡眠中の無呼吸がある場合には、睡眠時無呼吸を扱っている呼吸器内科、耳鼻咽喉科、睡眠外来などが適しています。
医療機関によって診療対象が異なるため、受診前にホームページなどで「睡眠時無呼吸」「睡眠外来」などの診療を行っているか確認するとよいでしょう。
また、レム睡眠行動障害など神経疾患との関連が考えられる場合には、神経内科などとの連携が必要になることもあります。
最初から自分で正確に診療科を判断する必要はありません。
まずかかりつけ医や精神科・心療内科などで相談し、必要に応じて睡眠専門医療機関へ紹介してもらう方法もあります。
睡眠の問題で医療機関を受診する目安
数日眠れなかったからといって、必ずしも睡眠障害というわけではありません。
仕事、試験、旅行、環境の変化などによって、一時的に睡眠が乱れることは誰にでもあります。
一方、次のような場合には医療機関への相談を検討してください。
睡眠の問題が続き、日中の生活に影響している
「何週間も眠れない」
「仕事に集中できなくなっている」
「疲労が強く、普段の生活ができない」
といった場合には、一度評価を受けることをおすすめします。
慢性不眠症では3か月以上という期間が診断基準の一つになりますが、3か月たつまで受診してはいけないという意味ではありません。
生活に支障が生じていれば、早い段階で相談して構いません。
運転中や仕事中にも強く眠くなる
運転中に眠りそうになるほどの眠気がある場合は、特に注意が必要です。
単なる睡眠不足だけでなく、睡眠時無呼吸や過眠症などが隠れていることがあります。
原因が分かるまでは、強い眠気がある状態での運転や危険を伴う作業を避けることが重要です。
睡眠中の無呼吸を指摘されている
家族などから、
「寝ている間に何度も呼吸が止まっている」
と指摘された場合には、睡眠時無呼吸の評価を検討してください。
特に大きないびき、肥満、高血圧、強い日中の眠気などを伴う場合には、医療機関で相談する価値があります。
睡眠中に激しく動く
夢に合わせて殴る、蹴る、叫ぶなどの行動がみられ、本人や一緒に寝ている人がけがをする可能性がある場合には、医療機関での評価が必要です。
睡眠中の行動を本人が覚えていないこともあるため、家族が撮影した動画などが診察の参考になる場合があります。
市販薬やアルコールに頼るようになっている
眠るために毎晩アルコールを飲むようになっている場合も注意が必要です。
アルコールを飲むと一時的に眠くなることがありますが、睡眠の後半が不安定になりやすく、夜中に目が覚める原因になることがあります。
また、量が徐々に増えていく可能性もあります。
市販の睡眠改善薬を長期間使用している場合も、原因となっている睡眠障害を一度整理した方がよいでしょう。
抑うつや強い不安を伴っている
睡眠障害とともに、
- 強い気分の落ち込み
- 何をしても楽しめない
- 強い不安
- 仕事や家事がほとんどできない
といった精神症状がある場合には、睡眠だけでなく精神状態についても相談してください。
特に「死にたい」「消えてしまいたい」といった考えが強くなっている場合には、睡眠の改善だけを待たず、早めに精神科などの医療機関へ相談することが重要です。
まとめ|睡眠障害は症状と原因を見極めて治療することが大切
睡眠障害という言葉からは「眠れない」という症状を想像しがちですが、実際にはさまざまな病気が含まれています。
夜に眠れない不眠症だけでなく、
- 睡眠中に呼吸が止まる
- 十分眠っても昼間に強く眠くなる
- 眠る時間帯が大きくずれる
- 睡眠中に異常な行動をする
- 脚の不快感や運動によって眠れない
といった睡眠障害があります。
また、睡眠は「睡眠圧」と「体内時計」をはじめとする複数の仕組みによって調節されています。ストレス、生活リズム、身体疾患、精神疾患、薬など、さまざまな要因によって睡眠は変化します。
そのため、睡眠の問題に対して単純に「睡眠時間を増やす」「早く寝る」「睡眠薬を飲む」と対応するだけでは十分ではないことがあります。
大切なのは、どのような睡眠の問題が起きているのかを整理し、その原因や睡眠障害の種類に合わせて治療することです。
不眠症であれば睡眠衛生、CBT-I、薬物療法などを検討し、睡眠時無呼吸であればCPAPなど、不眠症とは異なる治療が必要になります。
睡眠の問題が続いている、日中の生活に影響している、強い眠気や無呼吸、睡眠中の異常行動などがある場合には、一度医療機関に相談してみてください。
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